遺産分割協議
被相続人が亡くなり、相続が開始すると、被相続人のすべての財産(権利義務)は相続人に移ります(民法896条)。つまり、被相続人の死亡と同時に、何の手続きをしなくとも被相続人名義のすべての財産は相続人の物になるのです。
相続人が1人だけでしたら、その相続人がすべてを引き継げ(または放棄する)ばいいのですが、相続人が複数人いる場合、相続財産は、法定相続分の配分で共同相続人(=相続人全員のことです)の共有(=共同で所有すること)になります(民法898条)。
しかし、共有の状態では、一部の相続人だけで相続財産を売ったり捨てたりといった処分行為をすることができません(民法251条)。処分行為をするためには相続人全員の同意が必要となります。
そこで、どの財産を誰の物にするのかを決めるために、共同相続人で遺産の分割方法の話し合いをする必要性が生まれてきます。この話し合いのことを遺産分割協議といいます。

遺産分割の対象になる財産は?
すべての相続財産が遺産分割の対象となるわけではありません。
被相続人の債務は遺産分割の対象とはなりません。債務は法定相続人が法定相続分に応じて負うことになる、との判例があります。
仮に、債務を○○が引き受けるとの遺産分割協議をしたとしても、それは相続人の間だけの契約です。債権者がそれを承諾しなければ、その遺産分割協議は意味をもちません。
また、銀行預金などの可分債権(分割しても価値が損なわれないような債権)も遺産分割の対象とはならないとの判例もあります。判例では、預金債権は当然に法定相続分にしたがって分割されるのであり、遺産分割の余地はない、されています。
しかし実務上は、遺産分割協議書か銀行所定の書類を提出しなければ預金の払い戻しはしてもらえません。
被相続人が遺言をのこしていて、その遺言に遺産の分割の指定がされていれば、その指定は相続が開始したときから有効であったものとされます(民法909条)。
したがって、遺言で指定された財産は指定された相続人(または受遺者)の者となり、遺産分割協議の対象とはなりません。
なお、生命保険金は、受取人固有の財産ですので遺産分割の対象とはなりません(保険金の受取人が被相続人自身となっている場合は遺産分割の対象となります)。
遺族年金、死亡退職金なども受取人固有の財産ですので遺産分割の対象とはなりません。

遺産分割協議の当事者はだれ?
遺産分割協議には大前提があり、当事者の欠けた状態で行われた遺産分割協議は無効となります(民法251条)。
遺言のない相続の場合では、被相続人の財産を引き継ぐのは法定相続人だけとなりますので、この場合の当事者はすべての法定相続人が当事者となります。一部の共同相続人を無視して遺産分割協議を行うことはできません。
また遺言があっても、指定のされていない相続財産があったり、相続分の指定だけをしている相続財産があった場合は、その相続財産に関して、遺産分割協議が必要となります。この場合の当事者は、共同相続人および、包括受遺者(=被相続人の財産を割合で遺贈された者)がいればその者も含めて遺産分割協議をする必要があります。
なお、『胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす』(民法886条)との規定がありますので、胎児が相続人になり得る状況のときは、胎児も当事者となります。しかし、胎児のままでは意思表示ができませんから、家庭裁判所で特別代理人を選任してもらい、その特別代理人が遺産分割協議に加わります。
また、遺産分割協議後に認知された子が現れ、その子が遺産を請求してきた場合、相続財産を処分する前なら遺産分割協議は無効になりますが、処分した後では価額のみを支払えば足ります(民法910条)。

遺産分割の効力
遺産分割は相続開始の時にさかのぼってその効力を生じます(民法909条)。つまり、遺産分割協議後の相続財産は、相続が開始された時から相続したものとして取り扱われます。
ただし、第三者の権利を害することはできません(民法909条但書)。つまり、相続開始から遺産分割協議が終了するまでの間に、相続財産に対する権利を得た者には権利を主張できません。しかし、第三者として保護されるためには対抗要件を備える必要があります。




