相続手続きは終わったのに
2年ほど前、母が亡くなり(父はすでに亡くなっています)、私と兄の2人で母の財産を相続しました。私は実家の土地家屋と預貯金の約半分を、兄は生前に土地を贈与してもらっていますので残りの預貯金だけを相続しました。実家を相続したとはいっても、今は主人の仕事の関係で実家から離れたところに住んでいますので、この先どう管理処分しようかと悩んでいました。
ある日、兄から連絡があり、ときどきでいいから実家を使わせてくれとの申し出がありました。私としては管理の手間が省けますので兄の申し出に了承しました。ところが最近、実家の様子を見に行ったところ、兄夫婦が生活していました。兄夫婦の家にあった家具や電化製品がそっくり実家にあるのです。兄にたずねたところ、事業がうまくいかず、贈与された土地は手放し、私に連絡した以前から無断で実家に住んでいるとのことでした。
いくら私が実家を利用しないとはいえ、このような状況が続けばこの先問題になります。そこで、兄に何とかしてくれと言ったところ、
『俺は長男だ。父が生きていたときに、死んだらこの家は俺に譲ると(父が)言っていた。だから俺は出て行かない』
と開き直られました。たしかに、父は生前にそのようなことを言っていました。ですが、母の相続のときに2人で話し合い、私が実家を相続すると決めたはずです。名義も私の名義に変更しています。兄の言い分は法律的にどうなのでしょうか?私に所有権はないのでしょうか?

回答
『父が実家を自分に譲ると言っていた』との主張ですが、これは死因贈与といいます(民法554条)。贈与の一種ですね。『言っていた』とのことですから、口頭による死因贈与です。
死因贈与は贈与者(お父さまのことです、以下「父」といいます)の死亡により効力を発揮し、贈与者の死亡と同時に所有権は受贈者(兄)へ移ります。したがいまして、父が亡くなった時点で、兄が実家の所有権者となるのが原則です。
原則、兄が実家の所有者となるのですが、口頭による死因贈与は当事者が撤回することができます(民法550条)。この事案の当事者は父と兄ですが、父はすでに亡くなっていますので、兄が当事者となります。
そこで問題となるのは、父の相続時の遺産分割協議です。遺産分割協議は共同相続人全員の合意が必要ですので、その協議には兄が参加していたことになります。死因贈与があったことを知りながら、協議に参加し、母が実家を相続することに同意したのでしたら、兄はその死因贈与を撤回したものと考えることもできます。
本来なら、父の相続開始時点で兄の所有物ですので、相続財産には含まれず、遺産分割の対象にもなりません。しかし、兄が死因贈与を撤回したと解釈するならば、実家は相続財産に復活し、遺産分割の対象となります。
その結果、母が相続し、母の相続時に、兄との遺産分割協議を経て相談者様が相続したのでしたら、実家の所有権は相談者様にあると思われます。




